小学生で親知らずを抜歯する利点
2019年に書いた記事ですが、大切な事なので再掲載させていただきます
世界の予防歯科先進国では、ポピュラーな親知らずの卵(歯胚)の時期での抜歯
日本では、まだまだマイナーだと思います
最大の理由は、予防的に親知らずの卵を抜歯することは、保険適用外で
完全自己負担(自費診療)になるからだと思います
日本の医療保険の原則は、親知らずの炎症が起きた場合に、救済措置として抜歯が保険適用となります
すなわち病に罹患するようになる時期=親知らずの炎症を招く時期=概ね成人年齢あたりからが保険適用での抜歯時期となっています
ここまでが前置きです
では
世界は、なぜ小学生という早い時期で、抜歯をするのでしょーか
今年 佐々木歯科で抜歯された11歳 小学5年生の患者様を例にご説明します
写真のように親知らずの卵(歯胚)が形成されたことで、
手前の永久歯(第二大臼歯)が真っ直ぐに萌出するスペースが無くなっています
結果、永久歯は、前歯方向に傾斜を招き、萌出困難な状態になっています
注(写真の患者様は、顎が狭小のため、親知らずと手前の永久歯と2本が生え揃うスペースがありません)
そこで、今後予測される奥歯の歯列不正及び咬合異常を防ぐために、予防的に親知らずの卵を除去して
永久歯(第二大臼歯)を正常な位置へ萌出させてあげられることができる
咬合誘導=咬合育成と呼ばれる自費治療を選択するということです
では
抜歯後の写真です
いかがでしょーか、親知らずを抜歯して3か月後の写真です
親知らずが無くなることで、永久歯が萌出できるスペースの確保ができました
すると前歯方向に傾斜していた永久歯は、自然に後方に向きを変えて萌出したという写真です
もっと解りやすく見ていただきます
一目瞭然ですね
これが予防歯科の先進国で一般的に親知らずの卵(歯胚)を小学生の時期に抜歯する理由の一つです
親知らずが原因での歯列不正改善には、効果絶大だと思います
そして将来歯列矯正治療をすることになるのであれば、この歯胚抜歯の方がはるかに安上がりだったということでもあります
最後
毎日沢山の患者様の予後を診察していて
一番避けたいのが
嫌な事・怖い事を先送りにして招く、弊害です
「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがありますが
写真の患者様(最近初診の成人の患者様)は、今後親知らずと手前の永久歯2本を抜かなくてはならないと思います
しかし、この患者様が、小学生の時期に親知らずの卵(歯胚)を抜いていれば
手前の永久歯(第二大臼歯)は救えたと思います
そしてさらにもう一つ、手前の神経がなくなって銀歯が入ってる永久歯(第一大臼歯)も
虫歯にならずに、健康な天然歯が維持できている可能性も、おおいに考えられます
まとめ
親知らずの卵(歯胚)の抜歯は、佐々木歯科では希望者のみ行っております
こちらからお願いすることはなく、佐々木としては、情報提供に努めています
理由は、保険適用外で、比較的高額だからです
患者様には、メリット・デメリットを説明し、患者様とご家族の判断におまかせしています
しかし、ネット環境やスマホの発達による、情報伝達速度の向上からか
年々希望者は、増えているように感じています
一考してみる価値はあると感じています。
佐々木歯科医院 院長 佐々木真啓